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渋谷怪談

 先日 M という人物に会った。

 以前彼は、レコード会社に勤めており、その後引き抜かれてある音楽誌の副編集長を務めたという。実に福福しい顔立ちをしていて、日経コンデナストの斉藤和弘氏にドーナツばかり食べさせて太らせるとこういう顔立ちになるんじゃないか、と話しながらぼんやり考えた。

 それはさておき。彼が勤めていたレコード会社脇の、有名な心霊スポットの話になり、ついでにこんな話を聞いた。

 以前、彼は渋谷の区役所近くに住んでたらしい。

 ある日(昼だったか夜だったか忘れたが)、ふと窓の外に目をやると、ぼんやりとしたものが見える。なんだかおかしいと思って立ち上がり、まじまじとそれを見ると……軍服を着た青年だったという。

 「なんで軍人なんでしょうね?」

 M氏「……あのあたりは、軍人が処刑された場所なんです。2.26事件の将校たちがね」

 歴史はもちろん、日本史にはまったくもって疎いので、「青年将校の反乱」ぐらいしかわからず、生返事をしてその場を切り抜けたが、その後気になって調べてみたら、こんなサイトを発見。

 今となっては、『カフェ・アプレミディ』やら、『渋谷公会堂』やら、『パルコ』やら、NHKやら、『エッグマン』やら、浮かれたものが散在する場所がこんな血なまぐさい場所だったとは、全然知らなかった(もしかして常識?)。

 これについての関連情報、もしくはこういう怖い話あったら教えてください。ビビりですが、聞くのは大好きなので。

【ビビリ度】 ★★★★★

◆本日の名盤……聴いていると、頭がおかしくなりそうになる音楽というものがあって(大体は狂人が作っている)、そういうものばかり聴いてた時期がある。なかでも、この曲の持つ殺伐としたムードはゾクゾクするほど狂気に満ち溢れていて、エフェクターすら開発されていない時期にアナログテープをいじり回してこんなものを作り上げたこの人はやっぱりちょっとおかしいと思った。耳ざわりはいいけれど、その実猛毒。ジョー・ミークの名曲「ラヴ・ダンス・オブ・ザ・サルース」収録のジョー・ミークI Hear a New World 』(1960)。

I Hear a New World

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前言撤回

 水曜日。

 妻から一本のメールが届く。件名は「大ニュース」。

 読んでみると……「性別に変更あり」。

 娘。どっちでも嬉しいことに変わりはないけども、心構えが180度違う。すでにドキドキしてきた。女の子か……思春期にはどーでもいい理由で猛烈に嫌われるんだろうな。変質者に襲われたらどうしよう。「お義父さん、娘さんを僕にください」とか言われるんだろうか。

 思わぬできごとなので、不安でいっぱいです。

 名前考え直さないと。

【サプライズ度】 ★★★★★

◆本日の名盤……女の子! 男だらけの家庭で育ち、男子校に通い、いつまで経っても「女性が家にいる感覚」に慣れない僕にとって、娘の存在はある意味フィクションに近い。性別の続報を聞いて、このヘンなアルバムのことを思い出した。いったいどこの国の女の子なのかわからないが、片言の英語でたどたどしく歌い上げるさまは、まさにフィクションそのもの。名曲「ドゥーピー・タイム」収録の ドゥーピーズ DOOPEE TIME 』(1995)。

DOOPEE TIME

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スリング講習会

 月曜日。

 妻とスリング講習会を受けるために中野へ向かう。

 スリングとは何か。赤子を背負うための、抱っこ紐みたいなヤツである。いや、抱っこ布というべきか。

 わりと最近のグッズで、子どもの年齢や体型に合わせて利用できるので人気がある。ただ、その利用法が十分に認知されていないのか、乳幼児を落っことしたりする事故も後を絶たないという。  

 せっかく大事に産んでも、落っことしてはなんにもならない。そこで、夫婦そろって今回の講習会参加ということになった。  

 中野の女性会館は、公団の立ち並ぶあたりの奥まったところにあった。バプテスト教会の隣のなかなか立派な建物である。それにしても暑い。5分ぐらいしか歩いていないのに、クラクラする。とてもじゃないが、妻だけでは辿り着けなかっただろう。  

 開場まで少し待たされ、育児室に通される。若夫婦、ミドル夫婦、乳幼児連れの奥さんなどさまざま。15人程度か。

 と思ったら、いきなり声をかけられる。顔を見たら、以前付き合っていた女の子だ。なんでもここで働いているという。付き合っていたのは10年ほど前のことだが、歳月を経ても彼女の容貌は全然変わっていなかった。ただ、この10年の間に彼女は子どもを三人産んだ、という。確か旦那さんは20歳年上だっただろうか。今では、豊富な食の知識を生かして、オーガニック料理のワークショップを開いているらしい。いかにも彼女に合った商売である。

 さて、肝心のスリング講習会は突然始まり、予備知識のない自分はただ話を黙々と聞くのみだった。サンプルをいじってはみたものの、いく通りもの背負い方や、その注意点が今ひとつ真剣に耳から入ってこない。

 最前列には、「スリング信者」みたいな女性が、いちいち相槌を打ったり、熱心に質問をしていたり、「人からこういうふうに言われたんですが、どうなんですか」と講師に詰め寄ったりしている。「そんなもん、自分で判断すりゃいいのに」と思ったが、縋り付くような心細い気持ちで母親はここにいるのかもしれない。

 それにしても、この違和感はどうだろう。

 違和感の正体を考えてみた。

●ここにいる女性は、すっぴんで着飾ることなど微塵も考えていない(当たり前だが)
●彼女たちの身体のフォルムが妊娠向け、もしくはそれ向けに変化してきている

 つまり、彼女たちは妊娠という戦場に向けて銃を持って戦闘体制に入っているにもかかわらず、自分だけが浮き輪にシュノーケル姿で現れた海水浴客ぐらい、ちぐはぐな心構えでこの場に来ているからだと気が付いた。

 彼女たちは、生死のサイクルの中にいるのに、自分は明らかに傍観者……そんな気分だ。それは、男自体の宿命なのかもしれないけど。

 講習会には、子どもが産まれてからまた来てみようと思った。

【疎外感度】 ★★★★

◆本日の名盤……子どものために考えられた電子音楽集。果たして本当に子どもにいいのかはわからんが、とりあえず大人が聴くと気持ちはいい。ジャケが最高。レイモンド・スコットSoothing Sounds For Baby: Electronic Music By Raymond Scott, Vol. 1, 1 To 6 Months』(1962)

Soothing Sounds For Baby: Electronic Music By Raymond Scott, Vol. 1, 1 To 6 Months

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